| ■2006年2月1日
<<「憶えよう」と思ったわけでなく「憶えている」こと>>
学生時代、熱中したことに合気道と「靴づくり」がある。
靴職人のところへ通い、木型に肉付けをするところから、
デザイン、パターン、革の裁断、穴あけ、縫い、
釘をうちつけ引っ張って接着してたたいて…。
靴をつくることにした理由は、
欲しい靴が頭の中にたくさんあって、でも市販品にはなくて、
じゃぁ自分で作ろうと思い。
一所懸命、私は、情熱をかたむけていた。
いつか自分のブランドを持ちたいと思っていた。
東京の閑静なケーキ屋が並ぶ街角で
壁や天井を剥がし白いペンキを塗ったショップが
私がデザインした靴とバッグの専門店、
靴には「murasaki」と刻印されている。
真剣にこんな夢を描いていた。
このことは、学生生活の、ほんの、一部のこと。
すぐに忘れ去るようなことだと思っていたけれど
ただそれだけのことを、私はいつまでも憶えている。
偶然忘れなかったわけじゃない、ずっと、ちゃんと、憶えている。
あのとき、
思い描くイメージを形にしたいと強く願ったことや、
真剣につくるということへ向き合ったこと、
機械を動かすときに心臓がとてもドキドキしたこと、
ひと目ひと目を真っ直ぐ縫いたいと慎重になったこと、
毎日バスで通いながらどうしようもないくらいウキウキしていたこと、
熱中しすぎ疲れ果て帰りは先生に送ってもらっていたこと。
そんなことを、10年経った今まで、何度も思い出している。
社会人になったときも、なんにもできなかったときも、
書家になってからも、今日もこうして、思い出している。
私にとって
情熱を傾けられることがこういうことだということや、
自分が描いたものを形にすることが好きなことや、
そんな時間が何よりも充実していることを、
こんなにも憶えているのだから、
忘れないことのひとつなのだから、
心にグっとくるのだから…、
「大切なこと」だと記憶が教えてくれている。
「憶えよう」と思ったわけでなく「憶えていること」を遡ることで、
本当に「したいこと」「好きなこと」は簡単に明確になってくる。
こうして気付いたことを、
これからは丁寧に選び、
もっともっとたくさん持てるようにしようと思う。
紫舟 拝
<今日の画像>
靴職人になりきっていたときの写真と、一番最初につくった靴。
もう履いてはいないけれど、今もずっと大切に持っています。

TOPpageへ
|