紫舟 SISYU

水流香

水流香

すいりゅうか
2017年
アクリル、鉄
キュビズム
H86×W30×D30cm
作家蔵


流水は、どれほどの時を生きているのだろう。時として淀み痛んでもなお流れつづけることでその傷をいやし、土や植物たちを通りぬけては澄みわたってゆく。悠久の香りを運ぶ。



「書のキュビズム」は、紙にかかれた黒い書が言語の壁や国境を越えていく表現となることを願い、誕生した。
日本語を知らない人は、この国の文化である書を目の前にして、こう感じている。

輪郭をかいて中を黒く塗るのと何がちがうの?
墨をこぼした跡?
一筆でなぜ書かなければならないの?
絵は何度も上からなぞりひとつの表現をうみだすのに、なぜ?
書はわからない、と。

それは、書が、紙に固定されていることに由来する。
書家は、常に書が平面ではないことを知っている。
筆先が紙面を泳ぐときに、紙の深さを感じとっている。
その紙の「深さ」や書いている時間を可視化した作品が、「書のキュビズム」。
彫刻は、筆圧の強い箇所ほど奥にゆき、 手前ほど筆は紙に軽く触れている。
一筆で描かれた箇所は、一本の彫刻となる。
彫刻をみることで、紙に書かれた書の奥行きを理解し、書家の体温を追跡する。

紫舟は、多角的に文字を再構築する書を「キュビズム」と名づける。